医薬品であるリツキサンの、作用と副作用について教えてください。
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リツキサンは、非ホジキンリンパ腫に用いる薬で、モノクローナル抗体薬の一つです。2001年に発売が開始された比較的新しい薬です。
白血球の一種であるリンパ球には、B細胞やT細胞などがあり、リツキサンはこのうち、B細胞が悪性化するタイプの非ホジキンリンパ腫に使用します。非ホジキンリンパ腫とは、悪性リンパ腫(リンパ球が悪性化する病気)の一つで、もう一つの悪性リンパ腫であるホジキン病に比べると、日本人に多い疾患です。ホジキンリンパ腫が20~30歳代と60歳以上の人に多いのに対し、非ホジキンリンパ腫は50歳代以上がピークとなっています。
抗体とは、細菌などの体にとっての異物を認めると、その異物と結びついて免疫系がそれらを体から排除するのを助ける働きをします。
モノクローナル抗体薬は、がん細胞などを標的として結びつくように遺伝子工学的に設計された抗体です。モノクローナル抗体薬であるリツキサンは、悪性化したBリンパ球と成熟段階にある特定の正常Bリンパ球に存在しているCD20というタンパクに結合します。リツキサンと結合したリンパ腫細胞に対して免疫反応が強く起こり、貧食細胞(マクロファージ)がリンパ腫を異物と認識して、食べたり、破壊したりします。CD20という目印のあるタンパクにだけ結合するので、従来の化学療法に比べ、正常細胞への副作用が少ないのが特長です。
海外のデータによると、リツキサンプラス化学療法を行った患者群は、化学療法単独の患者群に比較して、長期生存する人が10パーセント多くなっています。10パーセントというと大きな差がないようですが、悪性リンパ腫における長期生存とは病気が治癒したとほぼ同じ意味で、それが10パーセント改善するのは画期的なことです。
リツキサンは点滴で投与されます。患者の体表面積から1回あたりの治療に必要な量を計算し、最大8回投与します。通常、初回は入院して行うことが多いのですが、2回目以降は一般的に外来で行うことになります。
リツキサンの主な副作用には発熱、悪寒、虚脱感、かゆみ、頭痛、ほてり、血圧上昇、頻脈、多汗、発疹などがあります。これらは通常、比較的軽微な副作用です。
血液に関する異常では、白血球の減少、好中球の減少、血小板の減少などが現れることがあります。
重篤な症状としては、アナフィラキシー様症状、肺障害、心障害などの副作用があります。まれではありますが、肺浸潤や心筋梗塞、心室細動などを引き起こし、亡くなったケースもあります。
リツキサンの副作用の多くは、初めて行う治療中に起こり、治療が終わるころまでか、遅くとも1日経てば、ほとんど症状がなくなるか、軽くなります。2回目以降の治療では、副作用は減少しますが、2回目以降に初めて副作用が現れることもありますし、それまでと異なる副作用が現れることもあります。
副作用に対する予防法として、リツキサンの点滴を行う前に、抗ヒスタミン剤と解熱鎮痛剤を内服します。
リツキサンとほかの治療法を併用すると、リツキサンの副作用に加えて、併用する治療法の副作用が出ることがあります。R-CHOP療法を行った場合は、短期的な副作用では、吐き気、白血球の減少、血小板の減少、貧血など、長期的な副作用では、脱毛、手足のしびれ、心臓に対する悪影響などが起こることがあります。
また、リツキサンは血圧に影響することもあるので、高血圧に関する薬を服用されている場合は、あらかじめ主治医に相談したほうがよいでしょう。
薬である以上、副作用には注意が必要ですが、リツキサンの登場によって、非ホジキンリンパ腫の治療は新たな段階を迎えました。いま大きな期待を寄せられている薬の一つです。
■リツキサンの副作用 一般的な副作用
?発熱、悪寒、かゆみ、頭痛、ほてり、血圧上昇、頻脈、多汗、発疹、白血球減少、好中球減少、血小板減少など
重い副作用
?アナフィラキシー様症状、肺障害、心障害など
R-CHOPの副作用
?吐き気、白血球の減少、血小板の減少、貧血、脱毛、手足のしびれなど